※この記事はネタバレ要素を含んでいます。
孤独のヒットマンと家族を失った一人の少女の切ない愛を描いた、映画レオン。
1994年公開ながら、いまだに名作として映画ファンの心に生き続けていることでしょう。
世界で圧倒的な高評価を得ることになったこの作品はリュック・ベッソン監督の代表作に。
そして主人公のレオンを演じたジャン・レノ、子役のマチルダ役を熱演したナタリー・ポートマンにとって、俳優としてブレークするきっかけにもなりました。
最愛の人を失うことになるこの物語は「切ない悲劇」と捉えられがちですが、ラストシーンからは「ハッピーエンド」の側面を垣間見ることができます。
レオンのあらすじ
ニューヨークで孤独に生きるイタリア系移民のレオンは、プロの殺し屋として、レストランの店主という表の顔を持つイタリア系マフィアのボス、トニーを介した依頼を完璧に遂行する日々を送っていた。
ある日、「仕事」帰りのレオンはアパートの隣室に住む少女マチルダと、彼女の顔に父親からの暴力の痕があることをきっかけに知り合う。マチルダは実父であるジョセフだけではなく、異母姉のジョアンからも虐待を受けており、継母のマージからはまるで関心を向けられず、幼い弟マイケルにしか心を開けない、閉塞感に満ちた日常を送っていた。「大人になっても人生はつらいの?」と尋ねるマチルダに、レオンは「つらいさ」と答える。
その翌日、ジョセフが麻薬密売組織の「商品」を横領したことを見抜いたスタンスフィールドとその一味がジョセフの部屋を襲撃。現場は銃撃戦となり、マチルダの家族は4歳のマイケルもろとも殺害される。家に居たくないと、レオンのためにいつもの2パックの牛乳を買いにでかけ、運良く難を逃れていたマチルダは、とっさに隣室のレオンに助けを求め、レオンはしばし逡巡した後に彼女を保護する。
巧みな駆け引きを駆使し、弟の復讐のため殺しの技術を学ぼうとするマチルダは「ボニーとクライドや、テルマとルイーズみたいにコンビを組もう」とレオンに持ち掛ける。レオンは学がないものの、マチルダに暗殺技術を伝授することをためらう一方、「根が地面についてないということが自分と同じだ」と、鉢植えの観葉植物に強いシンパシーを寄せる。レオンはマチルダに戦術の初歩を伝授し、マチルダは家事全般を請け負うかたわら、レオンに読み書きを伝授することになった。奇妙な同居生活を始めた二人は、やがて互いに心の安らぎを見出すようになり、複雑な感情と信頼を抱いていく。
レオンのラストは悲劇なのか?
映画のラストでは、レオンはSWAT部隊の執拗な攻撃により追い詰められ、脱出間際で悪徳刑事スタンフィールドに背後から撃たれてしまいます。
死の間際、体中に装備した手りゅう弾のピンを抜き、スタンフィールドと共に爆死。身を挺して「マチルダの仇」を取りました。
レオンは死んでしまい、唯一の身寄りだった彼を失ったマチルダ。
愛する人を失うというラストシーンは、まるで「悲劇」のようです。
しかし、本当にそうだったのでしょうか?
レオンのラストシーンに見る「ハッピーエンド」
レオンは、スタンフィールドの手によって殺されてしまいました。
マチルダはレオンを失い、これからも一人で生きていかなければなりません。
この事実だけを見れば「悲劇」と言わざるをえないかもしれません。
ここで、レオンのラストシーンを思い出してみましょう。
ラストシーン:校庭に「友」を植えるマチルダ
レオンの死後、彼の雇い主だったトニーに「レオンのことは忘れて、学校に戻れ」と諭されたマチルダは、学校に戻る決意をします。
マチルダは「レオンの唯一の友」だった観葉植物の鉢を抱え、学校に向かいます。
そして「再入校」を許されたマチルダは校庭に観葉植物を植え、「もう安心よ、レオン」と語りかけ、映画は幕を閉じます。
このセリフから、マチルダはこの観葉植物を「レオンそのもの」と捉えています。
レオンは生前、この観葉植物を「友」と呼び、鉢植えにされ地に根を張っていない姿に自己投影をしていました。
毎日身を守るため「片目を開けたまま」眠ることしかできない日々を脱出して、いつか地に根を張った安心できる生活がしたい。できればマチルダと共に…
レオンは常日頃からそう願い、マチルダもまた、彼の気持ちを感じ取っていたのでしょう。
レオンは死を迎える直前、マチルダとの最後の会話となったシーンにおいて、彼女にこう言いました。
君は俺に生きる望みをくれた
大地に根を張って暮らしたい
独りにはしないよ
(引用元:レオン完全版)
「掃除人」という身の安全が不安定な仕事から足を洗い、マチルダと二人で幸せに暮らしたい。
レオンの本音がもっとも現れたセリフでした。
レオンは「地に根を張った生活」を手に入れた
レオンは死んでしまいました。
しかし、マチルダの手によって「レオン」は校庭に植えられ、ようやく「地に根を張った生活」を手にすることができました。
もう敵が襲来してくることはありませんから、両目をつぶって安心して眠ることができるようになりました。
そして何より、ずっとマチルダと一緒にいることができます。
観葉植物となったレオンは、校庭からマチルダの成長をずっと見守ることができるようになりました。
レオンの願いが、ようやく叶った瞬間です。
マチルダの更生
マチルダは映画冒頭、学校の先生から不登校を責められ、退学の危機に陥ります。
その後、親や姉弟をスタンフィールドに殺され、仇を打つためにレオンに「掃除人になりたい」と志願します。
レオンはしぶしぶ彼女に銃の打ち方などを指南しますが、内心では歓迎していませんでした。
物語中盤で、彼はマチルダにこう言っています。
人を殺すとすべてが変わる
取り返しがつかない
目を片方開けて寝るはめに
(引用元:レオン完全版)
レオンは、マチルダに対して「自分のようになって欲しくない」と願っていました。
結局マチルダ自身は人殺しに手を染めることはなく、宿敵スタンフィールドもレオンの手によって倒されました。
レオンが死んだ後、親代わりとなったトニーに「学校に戻れ」と諭されたマチルダ。
トニーも多分、レオンと同じ気持ちだったのでしょう。
「こんな世界からはさっさと足を洗い、幸せになれ」と。
そうしてマチルダは、学校に戻りました。
幸せな人生を歩むために、前進し始めたのです。
大地に根を張った生活を手に入れたレオンと、彼に見守られながら更生への道を歩き出したマチルダ。
これは十分、ハッピーエンドと呼べるラストシーンではないでしょうか。
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